世界への扉 - 田才諒哉のブログ

国際協力の仕事をしています。砂漠とイスラム教の国、スーダンからお届け。

国際協力の仕事における「決断力」の重要性

こんにちは!田才諒哉(@ryoryoryoooooya)です。
北アフリカに位置するスーダン共和国にて、NGO職員として活動しています。

 

今回は、国際協力の仕事をする上で特に重要だと考えている、「決断力」の重要性について書きたいと思います。

 

Z国での学校建設プロジェクト

例えば、こんなシチュエーションがあったとします。

私たちはZ国で開発支援を行う国際NGOです。
Z国のある村で学校建設を行います。
そこでまず、1月末にいくつかの建設会社から建設予算の見積もりを出してもらいました。

 

1. A会社
400 DD(←仮想の通貨単位です)
施工期間:3ヶ月
現地語(Y語)しか通じない
学校建設経験はほとんどない

2. B会社
500 DD
施工期間:5ヶ月
英語が少し話せる担当者がいる
学校建設の経験が豊富

3. C会社
800 DD
施工期間:3ヶ月
英語で不自由なくコミュニケーションが取れる担当者がいる
学校建設の経験が豊富


当初団体で立てた建設予算は600 DDですが、800 DDを支払う財政力はNGOにあります。しかし、この国では汚職も日常茶飯事で、Cの建設会社は明らかに不当な要求をしています。

また、Z国ではNGOは担当政府からの許可を常にもらってからでないと活動を行えず、担当政府(教育省)の担当者からは「C会社では親戚が働いている。信用できる会社だからC会社にしろ」と助言を受けています。政府の許可は担当者の独断で決まり、許可がおりるまでには、上手く進んでも申請してから最低2週間はかかります。

日本のドナーとの関係で、学校の建設は今年の5月末までに完了し、ドナーに完了報告をしなければいけません。

 

さて、A,B,Cのいずれかの会社の中から選択をする場合、みなさんはどの建設会社と一緒に学校建設を進めますか?

 

国際協力の現場で「100%な状態」はないに等しい

正直、途上国で最高の状況を作り出すことは難しいです。現地政府の規制や、時間やお金に対する感覚、価値観の違いなど、考えられるすべての事象を考慮した上で、その落とし所を決断すること。そしてその決断に最後まで責任を持つこと。

 

なんならもう、国際協力の事業を進めていくすべてはこれに尽きるとすら最近思っています。その過程で外国語でのコミュニケーションや交渉力、文章作成力なんかも必要ですが、あくまでも過程であり、

・リスクに敏感になること
クリティカルシンキング
・情熱・希望・夢・可能性

この辺りがとても重要で、「冷静な思考」と「アツい想い」とをバランスよく持ち合わせた上で一つひとつの判断をし、プロジェクトを前に進めていく力が重要です。予測不能なことがなんでも起こりうる途上国の環境で、「〜〜かもしれない」「〜〜だったら」は常に考え続け、そして「決断」する。

 

「決断」のために必要な貴重な素材がどれだけ集められるかは、途上国での経験値にかなり比例する部分があると感じています。特にリスクの部分。「レイニーシーズンだから1,2日フィールドへ行く予備日を設ける」「不当な請求がされないように契約書内に想定されうる出来事をすべて落とし込めているか」「決定事項を覆されないように、書面上でその事実をキープできているか(途上国は紙文化がまだ強い印象です)」「電気が盗まれにくい家か?(完全に自分の家の状況から学んだことです…笑)」こんなことに自然に気づけるように徐々になってきた気がします。

 

リスクを徹底的に考え抜いて「決断」する

さて、冒頭の問いについて。答えは割れると思いますが、僕ならこのシチュエーションではB会社を選択します。

 

A会社で考えられるリスクは、
・Y語しか通じず、学校建設経験もほとんどないため、建設プロセスに時間がかかり、施工期間3ヶ月をオーバーする可能性がある
・Y語しかできない=会計書類がY語であがってくるため、日本のドナーに会計報告をしっかりするためには、翻訳作業が必要になる
・政府の許可がおりない

B会社で考えられるリスクは、
・施工完了がドナーと約束した期限を過ぎてしまう
・政府の許可がおりない

C会社で考えられるリスクは、
・C会社から現地政府にお金が賄賂で流れる(C会社の親戚が政府と癒着している可能性がある)
・当初の団体で立てた予算をオーバーしており、一番高額である

 

リスクがまったくない!みたいなシチュエーションは、途上国で働いていて出会ったことがないに等しいです(むしろそんなシチュエーションがあったら逆に疑いたくなる…笑)。しかし、事業は進めなければならない。必ずどこかで着地点を見つける必要があります。

 

B会社を選んだ場合、まずは日本のドナーに対して「なぜ期限内に終えられないのか」報告書を作成し説明した上で延長を依頼する。政府に対しては、実際は800 DD支払う財政力はNGOにあるが、政府との交渉では、「予算を500 DDまでしか組めない」と言い張り交渉する。

 

ドナーとの約束を守れていないので、100%の選択ではないですが、最善の選択肢は、「ドナーとの約束期限を延長する」ことによって、政府との交渉猶予や施工完了までの時間を確保することかなあ、とこのシチュエーションでは僕ならこう考えます。

まあ、期限が絶対の助成金もあったり、交渉力にもよると思うので、この選択ができるシチュエーションにないかもしれませんが・・・

 

この問題はだいぶ簡略化したので、実際の国際協力の現場は、もっともっと複雑な事象が絡み合っていますが、こうした作業を一つひとつの決断をする前に意識しながら日々事業を進めています。

 

そういえば青年海外協力隊の派遣前訓練で「ボランティアスピリット意見交換会」ってのがあって、こういうシチュエーションゲームをいっぱいやりました。短期ボランティアだけでしょうか・・・?

 

国際協力の現場に絶対の答えはないと思いますし、ぜひ冒頭の建設会社選択について、みなさんの意見も教えてくださいー!

 

それでは!チャオ!