こんにちは!田才諒哉(@ryoryoryoooooya)です。
北アフリカに位置するスーダン共和国にて、NGO職員として活動しています。
『続・入門社会開発―PLA:住民主体の学習と行動による開発』という本を読みました。
- 作者: プロジェクトPLA,勝間 靖,野田 直人,佐藤 峰,島津 英世,田中 雅子,坪内 睦,宗像 朗,山田 泰稔
- 発売日: 2017/10/31
- メディア: Kindle版
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ケース・スタディAとBが展開され、その後そのケース・スタディをもとにPLA(Participatory Learning and Action)の概念を紹介していくものなのですが、まずケース・スタディがリアルすぎて、国際協力の現場で働いたことがある人ならいちいち頷き、引き込まれてしまいます。
ケース・スタディ型の本は他にもありますが、これほど細部まで再現された本はないんじゃないでしょうか。
(政府で働く人間が、名刺の裏に自分の会社の紹介を載せているシーンとか、まさに今日スーダンで出会いました笑)
そして余談で、最後に気づいたのですが、僕の出身大学のコースの先生がケース・スタディを書いておりました。あとから「なるほど〜」と納得。
PLAとは、超簡単に説明すると、住民とともに学びながら行う開発です。
「そんなのそうじゃん!」と思うかもしれませんが、これを開発の現場で実践することは非常に難しいと思います。
なぜなら、「参加型」を語りながら、実態は「参加型でない」開発が多いからです。
ロバート・チェンバースさんの言葉を借りると、「ラベルの方が実質より広まってしまっている」。つまり、「参加型って大事だよね。参加型の開発をしよう!」ってみんな口々にしているものの、じゃあ「参加型開発」って具体的にどういうもの?なんで「参加型開発」のアプローチをとるの?という部分が置いてけぼりになっているのです。
参加型開発については、大きく以下の流れで漸進的発展をしていきました。
RRA:Rapid Rural Appraisal
↓
PRA:Participatry Rural Appraisal
↓
PLA:Participatry Learning and Action
この辺りから勉強したい方はぜひ以下の本を。
結論、国際協力の多くのプロジェクトはRRA止まりなものが多いように感じます。
RRAでは「住民から学ぶ」アプローチをとるのですが、援助側が都合の良い情報を抽出し、頭に描いた都合の良いシナリオに自然に誘導し、そしてもっと言うと援助機関の背後にいるドナーの都合に合わせた「答え」を導き出す。
RRAでは、たしかに住民の知識や価値観、問題意識など住民の捉えるリアリティをみるという点で「トップダウン型」の援助を脱しているかのように見えますが、実際は先に述べたような実態が蔓延っている気がします。要は、住民を開発の「対象」と捉えるに留まっており、ともに開発プロセスを担うパートナーになっておらず、住民の意向が反映されていないことはおろか、その過程において住民のエンパワーメントも促されていないのではないか、ということです。
どうしてそんな状況になったのかを考えると、大きく2つ理由があるように思います。
1つは、開発援助の結果が事前にきっちり決められすぎていること。
特にドナーがつくプロジェクトに多いのだと思いますが、例えばPDM(Project Design Management)やアクションプランの作成をプロジェクト開始前に行い、予めプロジェクト実施後のアウトプットがどうなっているかを見えるようにすることは多いと思います。
これ自体は否定しないのですが、問題は、そのPDMやアクションプラン、さらには少なくとも援助側の「こうなるべきだよね」という思い込みの混ざったアウトプットに縛られすぎて、開発の現場でもそのシナリオ通りに進むような意識が働きすぎていることにあると思います。
2つ目は、現場にいてよく感じるのですが、特定分野の専門性が重視されすぎている気がします。
教育、医療、林業など、特定分野に長けた知識・経験はもちろん大事です。専門性がないと進めていけないプロジェクトもたくさんあります。
ただ、こちらも同じく、住民を置いてけぼりにしたまま、専門家のシナリオ通りに開発を進めすぎているケースが多々あるように思います。
PLAの概念は開発学を勉強した人にとっては当たり前に知っている知識なのですが、PLA自体がかなりの柔軟な対応を強いられること(明確なプロセスとかがない)と、開発学のプロがスペシャリストとみなされない(ジェネラリスト扱い)ことが相まって、PLAが国際協力の世界であまりにも評価されていなさすぎると思います。
専門家の方も含め、本当にベースとなる国際協力の土台として、特に住民と近い目線で関わる機会の多いNGOなんかは、PLAについてはすべての人が正しく理解をし、実践するべきだと思います。
そして同時に、もっと開発に携わるジェネラリストは評価されるべきだと個人的には思いました。
一見現場にいると、なにもやってないじゃん感のある立場なのですが(笑)、僕は極論「こいつなにしてたんだっけ?」ってなりながらもプロジェクトを成功に導けるカタリスト的な存在が真の開発屋なんじゃないかと思っています。PLAの概念もこれに近いのかなと。
開発プロジェクトは失敗も多いです。今後その失敗を少しでも減らしていく鍵は、いろんな分野のスペシャリストをまとめられるジェネラリストにこそあるのではないかと思います。
話が脱線しつつあるのでこの辺で。
最後にもう一度『続・入門社会開発―PLA:住民主体の学習と行動による開発』を紹介します。Kindle版があるのは、駐在員にとって本当に嬉しい!Kindle化していただきありがとうございました。
- 作者: プロジェクトPLA,勝間 靖,野田 直人,佐藤 峰,島津 英世,田中 雅子,坪内 睦,宗像 朗,山田 泰稔
- 発売日: 2017/10/31
- メディア: Kindle版
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それでは、チャオ!