こんにちは!田才諒哉(@ryoryoryoooooya)です。
先日、スーダンでの任期を終えて日本に帰国しました。少し時間にも余裕ができたので、スーダンで感じたことや、これからのことについても少しずつこのブログでまとめていけたらと思っています。
国際協力のスタンスの話
みなさんは自分の仕事に「スタンス」を持っていますか?
以前、ラグビーU20日本代表監督などを務め、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターである中竹竜二さんのお話を聞く機会がありました。
中竹さんは早稲田大学ラグビー蹴球部で4年次に主将を務め全国大学選手権準優勝。その後同大学ラグビー蹴球部監督にも就任し、2年連続で全国大学選手権を制覇するなど輝かしい経歴をお持ちの方ですが、自身は名選手や名監督では一切なく、自分でチームを引っ張るようなことはできなかった、そしてその「チームを引っ張らない」という「スタンス」が、前述の結果につながったのではないかというお話をされていました。
スタンスがなぜ重要なのかというと、ブレないスタンスを持っていることで調子の波に左右されないことや、判断に迷ったときに決断をするための指針にもなります。そしてスタンスはときに、一見弱点のようにみえることもプラスに転換できる可能性があるのです。
さて、前置きが少し長くなりましたが、僕の国際協力の仕事におけるスタンスは「裏方に徹すること」です。
そしてもう一つ、現地事務所をマネジメントする上で大事にしていたスタンスは「ローカルスタッフを育てること」です。
国際協力の駐在員は、だいたい2,3年ごとに入れ替わるケースが多く、10年以上も現地に根を張って活動をしていらっしゃる方は本当に稀有な存在だといっていいでしょう。
一方で、ローカルスタッフは10年以上組織に関わっていることも珍しくなく、日本の人からはよく「駐在員すごいねー」なんて言われますが、本当にすごいのはローカルスタッフの方たちで、彼ら・彼女らがいなければ、組織が成り立たないというNGOはとても多いと思います。
また、現地で支援対象となる地域の住民の方々を育てるというのも非常に難しく、言葉や文化、価値観の違いが大きな障壁となってきます。
だから、駐在員など限られた時間の中で、長期的にみて効果的な支援を届けるためには、変革をひっぱるリーダー、つまりその役割を担えるような「ローカルスタッフを育てる」ということが一番大切ではないか、という結論にいたりました。
スタンスを守り続けることの難しさ
例えば、政府機関やプロジェクト関係者など誰かと連絡をとるにしてもできるだけ現地スタッフにやってもらう。自分の主張もなるべくしない。そのかわり、今どの優先順位が高いかを示してあげたり、彼ら・彼女らが働きやすいサポートをしてあげたり、とにかく黒子に徹すること。
正直、自分でやった方が早いなと思うこともいっぱいあります。でも、現地の人たちの意志なきままプロジェクトを進めても絶対に継続しない、それだけは断言できます。
やろうと思えばいくらでも先陣きってやることはできます。「じゃあそれはあなた、これはあなたがやってください。それが完了したら次はこれをしましょう」と、僕たちよそものの日本人から言うことは簡単です。でも、それに近いことで失敗した苦い経験もあるので、とにかく「裏方に徹する」スタンスはずっと大事にしていました。
でもそれって、ものすごく線引きが難しくて、やらなすぎてもダメだし、やりすぎてもダメだし。
もちろん日本にはプロジェクトに資金を提供してくださるドナーの方々がいて、締め切りに終われる仕事だっていっぱいあります。そんな中で妥協せず、じっくり、スーダンの人たちのペースに合わせてプロジェクトを進めていくのは、本当に本当に難しかったです。
だから正直、このやり方でいいのかどんどん自信もなくなっていきました。
でも少しずつローカルスタッフへの裁量権を増やしていったり、彼ら・彼女らが自主的に「こうしたい」と提案してきてくれたことに対してはできるだけ実現できるようにサポートし続けました。
「そんなことにお金使えないよ」と思うようなことでも、僕たち日本人の常識で判断するのではなく、一度スーダンの人たちの価値観の中で考えてみて、それでも無理というときは、しっかりその理由を提示した上で説明するように心がけていました。
スタンスは貫き通してこそ意味がある
スーダンを去るとき、とあるローカルスタッフが「You are the best manager」と言ってくれました。自分のスタンスが正しいのか間違っているのかまったくわからなかったので、本当にこの一言に救われました。
そして、ここでもう一つ学んだ大事なことは、スタンスは貫き通してこそ意味があるということです。
これが途中で自分のスタンスに不安を覚えて、そのスタンスを変えてしまったら、きっとこんな結果にならなかったかもしれません。
ローカルスタッフにはもっとスーダンでやってほしいと言われました。スーダンも大好きです。でも今の自分の力のなさを超えるためには先に進まなきゃいけなくて、でもそれをローカルスタッフは最終的に頑張れって応援してくれました。そして安心して離れることができるのも、ローカルスタッフがこれからもスーダンのために全力を尽くしてくれると信じることができるからです。
日本へ帰国するフライトの出発直前、ローカルスタッフから電話がきました。
内容は自分の心の中にしまっておきますが、Go ahead! 前に進めと。だから、本当にがんばる。こんなに心強い支えはありません。今までももちろん必死だったけど、これからも本気で、社会を、世界を良くするために自分の力を使おうと決意しました。
これからも自分の国際協力の「スタンス」を大切にしながら、うちのボスからもらった言葉も胸に刻んで、この世界が少しでも良くなることに自分の力を使っていきます。