2016年にスタートした、VOYAGE PROGRAM(現 Readyfor VOYAGE)。
第6期プログラムが先日終了し、それと同時にプログラムの幕を下ろすことに決めました。
これまでに50のクラウドファンディング企画が立ち上がり、47のプロジェクトが目標金額を達成しました。
総寄付金額は177,293,545円。総寄付者数は8,867人でした。
このブログでは、なぜReadyfor VOYAGEをクローズすることにしたのか?
そして、これからの国際協力の世界のファンドレイジングについて、プログラムを経て考えたことを綴りたいと思います。
なお、すべて僕自身の考えであり、READYFOR株式会社様からの公式の見解ではないことをあらかじめ述べておきたいと思います。
さて、前置きはこのへんにして、ぼくは堅苦しい文章が嫌いなので、ここからはくだけていきますゆえ、おそらく長くなるだろうと思うので、ゆるりとお付き合いください。
VOYAGE PROGRAMの始まり
VOYAGE PROGRAMの始まりは、ぼくがまだ大学生だった当時、元シャンティ国際ボランティア会勤務で、今もフリーランスファンドレイザーとして活躍される鎌倉幸子さんにメッセージを送ったことが始まりでした。
2015年の年末に「こんなことがしたいんです!」と送り、年明けの1月4日だったかな、年始最初のミーティングが「VOYAGE PROGRAM」の構想についての相談でした。
(ちなみにその後鎌倉さんとは株式会社STYZで一緒にアドバイザーとして働かせていただきました。なんというご縁。笑)
そこからプログラムづくりのために、世の中にあるいろんな伴走支援型プログラムを研究して、国際協力団体やファンドレイジングに関する調査をひたすらして、急ピッチだったけど、スピード感をもって2016年4月1日にサービスをローンチできました。
構想からローンチまで、3ヶ月。やると決めたら、やる。特にサービスの立ち上げはスピード感が大事だと今でも思います。
当時、他社サイトも含めてぼくが調べた限りで、国際協力団体のクラウドファンディングの支援額は、平均100万円台。200万円以上寄付が集まるプロジェクトなんて数えられるほどしかありませんでした。
そんな中、第1期プログラムでは、1,400万円以上を集めるプロジェクトが出たり、なにより参加した8団体すべてがクラウドファンディングを達成したことが、VOYAGE PROGRAMの可能性を広げてくれました。
とにかく1団体も失敗しなかったことが本当に大きくて、会社としても新サービスで探り探りの状態だったから、ここでもし失敗した団体がいたら、たぶんこのプログラムは続いていなかったと思います。
最初はぼくも1,000万円以上のクラウドファンディングなんてまったく自信がなかったけど(自信満々にいけますってその団体には言っていたけど笑)、とにかく結果にコミットすること。その大切さも学びました。こういう新しいものって結果がすべてなんだなって。
プログラムが終了する背景
さて、そこから毎年2回のペースでプログラムを実施し、2019年、第6期まで続いたReadyfor VOYAGEを、今期限りで終了させることにしました。
理由はここに挙げられないことも含めてたくさんあるのですが、なによりオーガナイザーとしてのぼくの力不足だったと思います。
自分自身、最初はREADYFORの中の人間、3期からは外の人間(アドバイザーの立場)となりサポートしていたので、プログラムのマネジメントがとても難しく、そして結果的に歯がゆいサービスとなってしまいました。
とにかくサービスと結果にコミットすること。それが大切だと気づいていたにも関わらず、外部の人間になってしまったこともあり、なかなかフルコミットできない状況にありました。
結局はサービスへの想い、くさいかもしれないけど、まじで魂をサービスに宿らせることに尽きると改めて思いました。
そういう意味で、このプログラムを立ち上げたときに目指したかった世界「国際協力の世界のお金の流れを変えること」
そのビジョンと情熱を、自分一人が体現するだけでなく、拡大・伝播させることができなかったことは、ぼくの一番の反省点です。
もう一つは、サービスの変化のスピードの遅さ。
これは前述のコミットの話が根底にあるのかもしれないけど、社会課題の変化や世の中のニーズの変化はすさまじく早いのにも関わらず、プログラムとして提供できる価値が追いつけていなかったことが実感値としてあります。
国際協力の仕事をしていると、政府や国際機関と仕事をすることも多く、各種調整業務などそのスピードの遅さがネックになることも多いです。
だからこそ、民間企業のもつスピード感が社会課題の変化に対して柔軟にアプローチできる可能性を秘めているのに、企業のスピード感が遅いのであれば、一つのアドバンテージが消えてしまう。
正直に話すと、もっとやりたいこと、アイデアはありました。
それを実現できなかったことを、とても後悔しています。
ここからは、もっとやりたかったこと、これからの国際協力の世界のファンドレイジングの可能性も含めて、自分自身の思考の整理もかねて綴りたいと思います。
活動インパクトに対して、世界中から寄付が集まる仕組み
Readyfor VOYAGEで気づいたことは、日本人が挑戦しているプロジェクトの相性がいいことです。
挑戦する個人が表に立ち、その人の想いとストーリーを語る。
そんな挑戦する「○○さんを応援したい!」が理由で寄付をした人がいっぱいいたと思います。
もちろん、個人を応援するような仕組みはあるべきです。
一方で、活動インパクトに対してお金がつく仕組みをつくりたかった。
前述の「人に対してお金がつく」理論だと、同じ団体が年に何回もクラウドファンディングをすることって難しい。
実際、Readyfor VOYAGEはリピーターとして毎年参加してくださっていた団体もありましたが、1年に1回がMAXだったように思います。
これではファンドレイジングをやる側も、寄付をする側も疲弊してしまうかもしれない。
活動インパクトにお金がつく仕組みだと、日本に限らず、国外からも大きなお金を集められる可能性があります。
実際、Readyfor VOYAGEでは、海外から大きなお金の支援が入ったケースもあり、ファンドレイジングはなにも日本人だけをターゲットにする必要はないし、日本の国際協力団体の活動を、うまく料理して海外の支援者にも共感してもらえるように見せてあげることをもっとやりたかったです。
もちろん、そのためにはサービスを多言語対応させるなど、実務的な難しさもあるのだけど、ここってまだ日本ではどこもしっかりやれてないと思うので、先にやれたら大きなチャンスがあると思っています。
実行者の裾野だけでなく、国際協力の支援者の裾野を広げたかった
たとえば最近は、ローラさんやしょこたん(中川翔子さん)ら有名人がアフリカへ渡ったり、サッカー元日本代表の本田圭佑選手がウガンダでサッカースクールをやったり。
こうしたことは、国際支援というものに興味をもつ大きなきっかけになると思っています。
ぼくもNGOで働いていたのでとてもよくわかるのですが、国際協力団体にとって、ドナーピラミッドの底の拡張は難しいし、時間もかかるし、人材が少ないなかで優先順位もどうしても下がってしまいます(リテンションのほうが優先度が高い)。
実際、リテンションに関しては、その団体と既存支援者の間の関係性もあるし、その団体のファンドレイザーがしたほうがいいし、するべきだと思います。
でも、新規開拓の部分については、NGOじゃなくても、民間企業や行政など外部の助けで拡張できるポイントだと思っています。そして、そこへの影響力は、NGOよりも企業や行政の方があると思います。
そういう「役割分担」で、民間企業という立場だからこそできることをしたかったのですが、結局寄付者の獲得が、団体がすでに抱えているステークホルダー頼りになる局面も多かったし、最終的にパワープレイで達成までこぎつけた団体も多かったかもしれません。
「クラウドファンディングがしんどかった」という感想をきくことほど悲しいことはなく、たしかにしんどいものだと思って挑戦する心構えは大事だけど、しんどくないような「仕組みづくり」をしてあげることが、サービス提供者としての役目だと思うので、そこが行き届かなかったことが悔しい。
「でも、良い経験だった」と言っていただくこともあります。それはそれで嬉しいのですが、国際協力のファンドレイジングをもう一段階昇華するには、国際協力の支援者の裾野を広げてあげること。必ず必要だと思っています。
総寄付者数8,867人は、正直めちゃくちゃ少ない。ここを数十万、数百万人にできるプログラムをつくることが、今の寄付プログラムには必要だと思います。
Readyfor VOYAGEは、その団体がもっている力やポテンシャルを最大限まで引き出すことには成功したかもしれませんが、
そのポテンシャルを活用できる場所を最大限まで広げてあげることができませんでした。
ここも大きな反省点のひとつです。
人件費や足腰費用としても利用できるようにすること
国際協力を世界中の人たちの中で勉強して気づいたことは、日本の国際協力はやはり、技術協力の強さにあるということです。
ODAも日本の人口減少とともに目減りしている中、円借款に関しては、中国やこれから台頭してくるであろう新興国には勝てなくなるのではないかと思います(貸付すぎによるアフリカ諸国のfinancial sustainabilityの問題はあるものの)。
日本人は他の国の開発ワーカーと比べても、フィールドの奥深くまで入り込み、草の根でラポールのしっかり築かれた支援をしている団体が多い。
それが理由で、親日な国も多く、私たち日本人が海外旅行をしたときに恩恵を受けていることはいっぱいあると思います。
人件費を今まで通りかけて、活動インパクトに変化が生まれないより、
人件費を2倍にしてでも、インパクトが何倍にもなった方がいいからね。
結局「インパクト」で測るべきなんだと思います。
日本の国際協力団体に対しては、技術支援の核となる人件費や足腰費用も含めた必要経費をカバーできるくらい、大きな額でカバーできるようにしたかったです。
新興国におけるファンドレイザーの育成
最後のひとつは、新興国におけるファンドレイザーの育成です。
これについては以前ブログに書いているので、よかったらこちらをご覧ください。
最後に
最後になりましたが、Readyfor VOYAGE(旧VOYAGE PROGRAM)に関わってくださったすべての皆様に感謝いたします。
特に、READYFOR株式会社で、当時大学生だったにも関わらずVOYAGE PROGRAMという新規事業の立ち上げを任せてくれたCEOの米良さん。このサービスにコミットしたくて、当時内定をいただいていた会社を辞退するくらい本気で取り組むことができました。
またReadyfor VOYAGEに参加いただいた合計50のプロジェクトのみなさん。
特に、第1期の8団体(ウォーターエイドジャパン、かものはしプロジェクト、シャプラニール、シャンティ国際ボランティア会、テラ・ルネッサンス、アクセプト・インターナショナル(旧日本ソマリア青年機構)、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN、ロシナンテス)のみなさんには、いきなり名も知らない若造が、新サービスへの参加を営業で提案して、あのときみなさんが勇気をもって参加してくださったから、6期まで続けることができました。そのどんなときも新しいものに挑戦する姿勢を心から尊敬します。
これからも一緒に世界をよくするために歩みましょう。
毎回のようにワークショップをしてくださった鎌倉さんや電通の並河さんをはじめ、サポーターとしてご協力くださったみなさん、映像配信にご協力いただいたジュピターテレコムさんや、雑誌で連載をもたせてくださったソトコト、メディアサポートをしてくださったオルタナS、POVERTISTなど、あげればキリがありません。
よくぼくは国際協力の現場にもファンドレイジングにも顔を出すので、「どっちがやりたいの?」と聞かれるのですが、うーん、むずかしい。だって、どっちもやりたい。
というか、どっちも含めて国際協力だと思ってる。
国際協力の世界は、よくもわるくもドナーありきで成り立っているプロジェクトが多いです。
だから「プロジェクト→インパクト」の流れだけで国際協力の仕事を完結させるのではなく、
「ファンドレイジング→プロジェクト→インパクト」までの流れで国際協力を捉えることはとても大事だと思います。
ぼくはしばらくはまたアフリカの地に戻るのですが、必ず、めっちゃ進化した国際協力のお金の流れを変えるサービス?かはわからないけど、復活させて戻ってきます。
それまでは、またいっぱい勉強します。
自分が立ち上げたサービスを閉じることって、こんなに寂しいんだね。
サービスは子どもみたいなもんなのかな。子どもいないからわからんけど。
でも、思い残したことを吐き出せたので、ここからまた次に向かって進みます。
本当にみなさんありがとうございました!VON VOYAGE!